履歴事項全部証明書は、会社(法人)を設立して登記を行うと発行できる書類です。履歴事項全部証明書は、様々な場面で提出が求められます。
当記事では、履歴事項全部証明書の取得方法や申請書の書き方・かかる手数料などについて詳しく解説していきます。
履歴事項全部証明書とは?
会社を設立した後は、必ず法務局に出向いて登記を行わなければなりません。履歴事項全部証明書とは、会社についてすべて記載されている書類のことで、次の内容が記載されています。
- 商号(会社法人名)
- 本店の所在地
- 会社設立の年月日
- 移転や登記の年月日
- 目的
- 発行可能株式数
- 資本金の額
- 役員に関する情報
このように移転した日や登記した日、請求日から遡って約3年前から変更した履歴など、すべて履歴事項全部証明書には記載されています。
履歴事項全部証明書はどういった場面で提出する?
会社にまつわる大切な情報が、履歴事項全部証明書にはすべて網羅されています。
履歴事項全部証明書は、次のような状況で提出が必要となります。
- 会社(本店)を移転する時
- 銀行の融資を受ける時
- 補助金などを申請する時
- オフィスを借りて契約する時
- 過去の事業目的を証明する時
- 自分が役員だった場合はその証明
履歴事項全部証明書を法務局で取得するのに必要なもの
履歴事項全部証明書が必要になり取得する際には、次の3つが申請・取得に必要です。
必要なもの | 入手方法 |
---|---|
交付申請書用紙 | 法務局 法務省HPからダウンロード |
交付手数料(収入印紙) | コンビニや郵便局 |
切手と返信用封筒(郵送で申請する場合) | コンビニや郵便局 |
必要になった段階で用意しておくと、スムーズに取得できるでしょう。1つずつ内容について簡単に説明します。
必要なもの①交付申請書用紙
履歴事項全部証明書を取得するには、交付申請書用紙を記載し、提出しなければなりません。
申請書は法務局の窓口はもちろんのこと、法務省のホームページでもダウンロードできます。
交付申請書用紙ダウンロードPDFをクリックすると印刷できます。自宅で印刷する方はお使いください。
必要なもの②交付手数料(収入印紙)
交付手数料については別の章で記載していますが、それぞれ申請方法によって手数料の金額が異なります。
必要な金額分の収入印紙を買って、用意した①の交付申請書の右側の所定の位置に貼り付けましょう。
収入印紙は法務局の窓口(本局、支局ともに可能)、コンビニや郵便局で購入できます。コンビニの場合はレジにて直接購入してください。
必要なもの③返信用封筒と切手(郵送申請時のみ)
申請を郵送で行う場合は、封筒(返信用封筒)と切手も用意してください。返信用封筒は、履歴事項全部証明書を郵送で受け取る場合にのみ必要です。
- 封筒(郵送時に使用):「履歴事項全部証明書 交付申請書用紙在中」と、あて先の横など目立つように書く(法務局の職員が受け取った際に、何の書類かがすぐに判別できるため)。
- 返信用封筒:返送先(自宅でも会社でも)を記載する
- 切手:郵送する封筒・返信用封筒、両方に貼る
履歴事項全部証明書の法務局での取り方(申請方法)を分かりやすく解説
必要なものを用意できたら、早速申請しましょう。取得・申請には、次の4つの方法があります。
方法別に、申請する手順を分かりやすく解説します。自分に合う方法を見つけてください。
取得方法①法務局の窓口で申請し取得する(管轄区域関係無くどの法務局でも可能)
申請も取得も、法務局の窓口で行う方法です。
以前は会社の本店を管轄している法務局で無ければ取得できませんでしたが、現在は電子化により全国どこの法務局でも申請・取得ができます。
最寄りの法務局を調べたい場合は、法務局:管轄のご案内こちらのページで確認してください。
- 必要なもの:収入印紙を貼り付けた交付申請書用紙
記入例がテーブルに置いてあるはずです
数十分程度待てば、その場で交付されます。
取得方法②法務局に申請書を郵送して取得する
法務局に行く時間が無かったり、法務局が遠方にある人は、法務局に申請書を郵送して、履歴事項全部証明書も郵送で受け取る方法があります。
- 必要なもの:収入印紙を貼り付けた交付申請書用紙、封筒・切手・返信用封筒(返送先記載済み)
数日後、返送先に指定した場所に履歴事項全部証明書が届きます。
取得方法③オンラインで申請して法務局の窓口に取りに行く
申請はオンラインで行ない、履歴事項全部証明書は最寄りの法務局の窓口に取りに行く手順です。オンラインで行なうために、登記・供託オンラインシステムにて申請者情報登録が必要です。
登記・供託オンラインシステムでは、かんたん請求・と専用のソフトをインストールする申請用総合ソフトの2パターンあります。
履歴全部事項証明書のオンライン申請の場合はインストールが要らずWebブラウザ上で行える「かんたん請求」で可能で、電子署名や添付書類なども不要です。
手数料も、ネット上で支払えます。
3 手数料の納付
登記ねっと かんたん証明書請求による請求手順
国庫金納付に対応したインターネットバンキングやATM等を利用し,電子納付を行います。
※クリックすると請求内容は訂正不可能となります
※ペイジーを使ってATMで納付する場合は収納機関番号や納付番号などを控える
翌日には取得できるので、手順4.で受け取り場所として指定した法務局窓口へと取りに行きましょう。
手順5.「送信実行」をクリックした時間が17時15分以降であれば翌日に処理されるので、その場合は翌々日に受け取りに行ってください。
取得方法④オンラインで申請して郵送してもらう
最後の方法は、申請だけオンラインで行ない、履歴全部事項証明書は郵送してもらう方法です。
オンラインでの申請なので、上記で説明した登記・供託オンラインシステムの「かんたん請求」から手続きします。
手順1〜3、手順5〜7は、「取得方法③オンラインで申請して法務局の窓口に取りに行く」と同じです。
※早く受け取りたい人は速達を、確実に対面で受け取りたい人は簡易書留など、状況に応じて選びましょう。普通郵便の場合、2-3日はかかります。
※ペイジーを使ってATMで納付する場合は収納機関番号や納付番号などを控える
※STEP4にて速達や簡易書留などを設定した場合は、実費が手数料にプラスされて加算されます。表示された納付額に含まれているので、確認しましょう。
履歴事項全部証明書を申請できる時間帯
履歴事項全部証明書は方法ごとに、申請できる時間帯が違います。知っておかないと、取得するタイミングもずれてしまうため注意してください。
法務局で申請する場合
法務局の受付は平日のみ午前8時半~午後5時15分までです。土日祝・年末年始期間は閉館しているので、申請は平日に行なってください
週明けと週末・連休前後は混雑しやすいので、可能なら避けましょう。交付窓口:混雑状況の目安も参考にしてください。
郵送する場合
郵送する場合(ポスト投函)は、特に時間帯に制限はありません。ただし郵便局の窓口で送る場合は、その郵便局が開いている時に行きましょう。
オンラインで申請する場合
オンラインで申請する場合も、『平日午前8時半~午後9時まで』と利用時間が決められています
ホームページにアクセスはできますが、ログインしようとすると「システム時間外です」とエラーが出て申請できません。
また、午後9時まで申請手続き自体はできますが、17時15分を過ぎると翌日の処理となるので注意が必要です。
履歴事項全部証明書の申請書の書き方
本章では、履歴全部事項証明書の申請書の書き方をご紹介します。上記の「①法務局の窓口で申請・②法務局に申請書を郵送する」が該当します。
記入例を上から順に分かりやすく説明していきます。
- 窓口に来られた人(申請人):住所と名前(フルネーム)・フリガナを記入する(例:東京都港区1-1-1・法務 太郎)漢字の上にフリガナを振ってください
- 商号・名称:会社の正式名称を記入する(例:株式会社ホウム)
- 本店・主たる事業所(会社等の住所):会社(本店)の居住地を記入する(例:東京都渋谷区一丁目1番地1号)※丁目や番地・号まですべて記入する
- 会社法人等番号:分かるのであれば記入する
- 請求事項:全部事項証明書(謄本)の、□履歴事項全部証明書にレ点を付ける
- 書類右側の収入印紙欄:割印はせずにそのまま貼る
法務省のホームページにある、登記事項証明書:記載例PDFも参考にしてください。
履歴事項全部証明書を法務局で取得する際にかかる手数料
履歴事項全部証明書を取得する際には、手数料として480~600円がかかります。方法によって手数料の金額は異なるので注意してください。
- 法務局窓口で申請して取得する場合:600円
- 法務局へ郵送して窓口で取得する場合:600円
- オンラインで申請して法務局で取得する場合:480円
- オンラインで申請して郵送してもらう場合:500円
履歴事項全部証明書に有効期限はある?
取得した履歴事項全部証明書には、有効期限が設けられていません。
しかし、提出先にによって異なりますが、履歴事項全部証明書に限らず公的な書類の提出時は、“発行日から1~3ヶ月以内のもの”と指定されていることがほとんどです。
指定期限を過ぎた書類は無効になるので、気を付けましょう。
履歴事項全部証明書はどの方法で申請・取得するのがおすすめ?
履歴事項全部証明書の申請・取得には4つの方法があり、それぞれで長所/短所があります。方法別にどのような人に最適かまとめたので、参考にしてください。
おすすめの人 | 申請・取得方法 |
---|---|
手数料を安くしたい人 | オンラインで申請→窓口で取得 |
取りに行く時間がなかなか無い人 | オンラインで申請→郵送で取得 |
確実にその日のうちに受け取りたい人 | 法務局窓口で申請して取得 |
(手数料を安くしたい人)オンラインで申請→窓口で取得
手数料を安くしたい人は、オンラインで申請を行なって法務局窓口にて取得する方法が最適です。最安値の480円で済みますし、郵送するための封筒や切手代も不要です。
しかし法務局窓口に直接取りに行くため、遠方だと交通費がかかります。できるだけ会社や自宅などの近くにある法務局を指定して、受け取りましょう。
またオンライン申請だと、ネットバンク・ペイジー機能が付いたATMでの振込が可能です。コンビニなどで収入印紙を買う手間も省けます。
(取りに行く時間がなかなか無い人)オンラインで申請→郵送で取得
取りに行く時間がなかなかない人や近くに法務局が無い人は、オンラインで申請して郵送で取得する方法がおすすめです。手数料も500円と安く、普通郵便にすれば切手代だけで済みます。
こちらの方法もオンライン申請なので、ネットバンク・ATMでの振込がOKです。
(確実にその日のうちに受け取りたい人)法務局窓口で申請して取得
確実にその日に書類が欲しい人は、申請も取得も法務局で完結させましょう。
600円の手数料分の収入印紙を買う必要がありますが、法務局へ行くまでにコンビニで買い→申請→取得とスムーズな手続きが可能です。また午前中に取得すれば、そのまま提出先へと持参し提出することも可能です。
履歴事項全部証明書を法務局で誰でも取得できる?本人以外でも大丈夫?
履歴事項全部証明書は会社の情報がすべて記載されていますが、申請書を提出して手数料さえきちんと支払えば誰でも取得できます。しかも取得する人の身分証明書や印鑑の押し印も必要ありません。
会社・法人の登記事項証明書及び登記簿の謄本・抄本については,どなたでも,所定の手数料を納付して,その交付を請求をすることができます。
法務省 会社・法人の登記事項証明書等を請求される方へ
履歴事項全部証明書と登記事項証明書と登記簿謄本の違い
最後に、履歴事項全部証明書と登記事項証明書・登記簿謄本の違いをまとめました。ほとんど同じですが、使う場面や網羅されている内容が少し異なります。
履歴事項全部証明書
商業や法人など会社を設立した後は、会社名や本社の所在地・設立日・代表役員名などを必ず法務局へ登記します。その登記情報がすべて記載されているのが、履歴全部事項証明書です。
下記で出てくる現在事項全部証明書の内容に加え、申請した日から過去3年間の間に抹消された事項なども記載されています。
登記事項証明書・登記簿謄本とは?
では、登記事項証明書と登記簿謄本は履歴全部事項証明書とどこが違うのでしょうか。
- 登記事項証明書:登記簿に登録されている情報の一部及び全部の情報を証明できる書類のことで、主に土地や建物などの売買の際に必要な書類。
- 商業・法人における証明書には、履歴全部事項証明書の他に代表者事項証明書、現在事項全部証明書、閉鎖事項全部証明書の4種類が存在し必要な項目だけを証明することが可能。履歴全部事項証明書は登記事項証明書のうちの1種類。
- 登記簿謄本:登記簿に記載されている会社情報がすべて紙ベースで保管されていた時に使われていたもので、コンピューター化された現在では「登記事項証明書」の呼び名が主流。登記簿謄本が必要と言われたら、この登記事項証明書の取得でOK。
まとめ
履歴事項全部証明書の取り方(申請する方法)には、次の3つがあります。
それぞれ手数料・申請できる時間、メリットやデメリットを比較できるように簡潔にまとめました。
法務局の窓口で申請
- 受付時間と手数料:平日8時半~17時15分まで
- 手数料:600円
- メリット:即日取得が可能、近くに法務局があれば便利、申請書の書き方も教えてくれる
- デメリット:手数料が一番高い、法務局が近くに無いと不便
法務局へ郵送して申請
- 受付時間:いつでもOK(郵便局の窓口に行くなら営業時間内に)
- 手数料:600円
- メリット:プリンターさえあれば自宅で申請書が記入できて取得もできる
- デメリット:プリンターが無いと印刷できない、送る時と返送用封筒に貼る切手も2枚必要、届くまでに時間がかかる、収入印紙の購入が必要
オンラインで申請
- 受付時間:平日午前8時半~午後9時(登記供託オンラインシステムの利用時間のみ)※9時まで可能ですが、17時15分以降だと翌日の処理です
- 手数料480円(窓口受取)・500円(郵送受取)※郵送なら切手代もプラス
- メリット:手数料が一番安い、自宅に居ながらサクッと申請できる、収入印紙の購入代がネットバンクから支払える
- デメリット:パソコンが必要、システムに利用者登録する手間が要る、郵送受取なら時間がかかる
どの方法もメリット・デメリットがあります。パソコンやプリンター環境が整っているのか、法務局までの距離、書類を必要とするまでの時間など、色々な面を考慮して最適な方法で申請・取得していただけたらと思います。
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