本店の所在地を移転した時は、忘れずに登記しなければなりません。
本記事では、本店移転登記を行う際に必要な書類をまとめました。また、取得する方法と申請する方法も合わせて解説していきます。
本店移転登記する際の必要書類
本店移転登記を行う際は、下記の書類が必要です。
- 本店移転登記申請書(管轄内外移転ともに必須)
- 株主総会議事録(定款の内容を変更する場合のみ)
- 株主リスト(株主総会議事録を添付する場合のみ)
- 取締役会議事録(取締役会を設置している会社)
- 取締役会決定書(取締役会が未設置の会社)
- 委任状(代理人が申請する場合)※管轄外移転なら2通
- 印鑑届出書/印鑑カード交付申請書(管轄外移転の場合のみ)
管轄内で移転するのか管轄外へ移転するのかで必要な書類が異なります。どのような書類なのか、1つずつ簡単に説明していきます。
必要書類①本店移転登記申請書
本店移転登記申請書は、必ず必要な書類です。下記で説明する書類の一番上に添付して左側2ヶ所をホチキス止めし、すべてのページの繋ぎ目に実印を押しましょう。
申請書の作成ポイントは、管轄内移転の場合、本店所在地は移転前の住所を、申請人の欄には移転後の住所を記載することです。
申請書のフォーマットは、商業・法人登記の申請書様式名称の変更・主たる事務所移転3.5-6にてPDFやWord・一太郎の様式でダウンロードが可能です。
Point!所在地を管轄外に移転する場合は新法務局への提出分も必要
本店移転登記申請書は、管轄内の移転ならば移転前(旧)法務局宛の1通で構いません。しかし市区町村・都道府県をまたぐ等で法務局の管轄区域が変わる場合は、(旧)法務局と(新)法務局への2通が必要です。
作成ポイントは管轄内移転時とほぼ同様ですが、本店所在地には“移転後”の住所を記載します。また移転後(新)法務局への提出書類には、株主総会・取締役会の各議事録の添付は不要です。
必要書類②株主総会議事録(定款内容を変更時)
株主総会議事録は、定款の内容を変更する場合にのみ提出します。定款に番地までの住所が記載されていたり、記載の市区町村外へ移転する場合などは、定款の住所も変えなければなりません。
定款の内容を変えるには株式総会を執り行う必要があり、きちんと決議された旨の証明書として株主総会議事録を添付します。
必要書類③株主リスト(株主総会議事録を添付する場合)
株主リストは、必要書類②株主総会議事録を添付する場合にのみ用意すれば良いです。株主総会議事録とセットで添付すると覚えておきましょう。
必要書類④取締役会議事録(取締役会を設置している会社)
取締役会を設置している会社が本店を移転する場合、取締役会議事録を添付しなければなりません。
必要書類⑤取締役会決定書(取締役会が未設置の会社)
反対に、取締役会を設置していない会社の場合は「取締役会決定書」という書類が必要です。
取締役会を設置していなくても、取締役が集まって移転する場所・移転する日などの決議を行なわなければなりません。その記録を残した書類が、取締役会決定書です。
必要書類⑥委任状(司法書士など代理人が申請する場合)
本店移転の登記手続きを司法書士などの代理人へと依頼する場合は、委任状が必要です。管轄外への移転の場合は、新法務局宛の委任状を旧法務局宛の分と合わせて2通用意しましょう。
司法書士に依頼した場合、委任状は先方で用意するので、自分でダウンロードして一から作成するといった手間は不要です。用意された書類に必要事項を記入して、印鑑を押すのみです。
必要書類⑦印鑑届出書/印鑑カード交付申請書(管轄外移転時のみ)
7つ目に必要な書類は、管轄外に移転する場合にのみ必要な印鑑届出書と印鑑カード交付申請書です。移転した後の住所を管轄する法務局へと提出します。
印鑑カード交付申請書は、管轄外への移転の場合は移転前の住所を管轄していた法務局の印鑑カードが使えないので、新たに作成するために必要です。
こちらのPDFをクリックすると、自宅で印刷できます。プリンターをお持ちの方は印刷して記入・用意しておくとスムーズに手続きできます。
本店移転登記の申請手続きはいつまでに行うべき?
法務局へは変更があった日、すなわち所在地の移転が完了した日から2週間以内に申請することが会社法第915条第一項で決められています。
第915条
会社法第915条
会社において第911条第3項各号又は前三条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。
法務局での登記手続きが、2週間以内に完了する必要はありません。あくまでも移転が完了してから、2週間以内に登記の申請手続きを行なってくださいという意味です。
2週間を過ぎると100万円の罰金が科せられる可能性も
仮に、本店移転登記を行なったのに申請手続きが(移転完了日から)2週間を過ぎてしまったとしましょう。2週間以内にと決められてはいますが、受理はしてくれます。
しかし、会社法第976条第一項により、100万円以下の罰金が科せられる可能性もあるので注意してください。
本店移転登記時に必要な書類はどこに提出する?
本店移転の登記に必要な書類を用意できたら、各書類はどこに提出すれば良いのでしょうか。
本店の所在地を管轄外に移転する場合でも移転前の法務局にまとめて提出OK
本店の所在地を今までの管轄とは違うところへと移転する場合は、次の2つの書類が、新住所を管轄する法務局への提出分と2通ずつ必要でした。
- 本店移転登記申請書
- 委任状
しかし提出するのは、移転する前の住所を管轄する法務局だけでOKです。移転前の法務局が、移転先の法務局へと送付してくれるのです。
税務署や年金事務所・労働基準監督署・役所などにも忘れずに申請を!
前章で説明した7つの書類は、すべて法務局へと提出します。しかし本店の移転が完了したら、法務局以外にも税務署や年金事務所・労働基準監督署などにも届け出る義務があります。
法務局に提出し受理されると、履歴事項全部証明書(登記簿謄本)を取得できます。その履歴事項全部証明書の提出が必要な機関があるので、登記を済ませてから以下の機関へと忘れずに届出・申請した方がスムーズに進みます。
この章では、機関別にいつまでに申請すべきかをまとめました。
税務署:移転後すみやかに申請する
税務署へは、移転前・移転後どちらの税務署に対しても、次の2種類の書類を、すみやかに提出しましょう。
- 移動事項に関する届出
- 給与支払い事務所等の開設/移転/廃止の届出
都道府県税事務所:移転してから10日以内に
税務署の他に、各都道府県の税事務所に履歴事項全部証明書(コピー)を添えて、次のの書類を提出しなければなりません。
- 法人の名称変更等の報告書
都道府県をまたいだ移転の場合は、移転後の税事務所へも届出・申請してください。10日以内に行えばOKです。
年金事務所:移転してから5日以内に
年金事務所へも、履歴事項全部証明書(コピー)を添付して、次の書類が必要です。
- 健康保険/厚生年金保険適用事業所証明書(訂正)
管轄外への移転の場合は、移転前の年金事務所に提出してください。いずれも申請期間は移転後5日以内と短いので、忘れないように気を付けてください。
労働基準監督署・ハローワーク:移転してから10日以内に
労働基準監督署には次の書類を提出します。
- 労働保険名称/所在地当変更届
ハローワークには次の書類を提出します。
- 上記の労働保険名称/所在地当変更届(控え)
- 雇用保険事業主事業所各種変更届
移転してから10日以内に提出しましょう。いずれも、移転後の住所を管轄する労働基準監督署・ハローワークに提出します。
各市区町村役所:移転してから30日以内
移転先の住所が市区町村も変わるのであれば、次の書類を、履歴事項全部証明書(コピー)と合わせて提出してください。
- 法人の設立/設置/変更等に伴う届出(異動届)
★このように法務局以外の機関へも、忘れずに届出・申請しなければなりません。機関によって届出期限が違うため、一番短い5日以内の期日に合わせて書類を用意、提出した方が抜けが無く良いでしょう。
本店移転登記にかかる費用
本店移転登記にかかる費用について記載します。詳しくは費用について詳しくまとめた記事が当サイト内にあるので、そちらをお読みください。
登録免許税は管轄内移転と管轄外移転で違う
まず、必ず発生する費用は「登録免許税」です。
- 管轄内移転:30,000円
- 管轄外移転:60,000円
管轄内、外どちらの移転であってもいずれかの税金を支払います。
管轄外移転の場合、書類は旧法務局へまとめて提出すればOKでしたが、書類は2通用意しました。その分、登録免許税も2倍になるのです。
支払い方法は収入印紙か電子納付
登録免許税は、収入印紙か電子納付で支払いましょう。本店移転登記申請書に収入印紙を貼り付ける欄があるので、金額分の収入印紙を買って貼り付けます。
本店移転登記はオンラインでの申請が可能です。オンラインで申請する場合は、登録免許税の支払いが電子納付として、ネットバンクから支払えます。
ネットバンク口座を開設していればそのままインターネット上で振り込めるので、収入印紙を買う手間も要りません。
ちなみに現金で支払いたい人は、申請用総合ソフトから納付用紙を印刷すれば、現金での納付も可能です。
本店移転登記時の申請方法
最後に、本店の移転を登記する際にどのような申請方法があるのかを紹介します。
申請方法①自分で手続きする
自分で手続きするには、次の2種類の方法があります。
- 窓口で申請する:法務局に出向き、申請書を記載して窓口にて申請する
- オンラインで申請する:「登記・供託オンラインシステム」か「申請用総合ソフト」をダウンロードし、オンライン上で申請する
オンラインでの申請は法務局に行く必要が無いですが、電子証明書とソフトのダウンロードが必要です。
申請方法②司法書士に依頼する
2つ目の方法は、司法書士に依頼する方法です。プロに依頼するので確実に申請が行えますが、報酬を別途支払う必要があるので、割高になります。
司法書士事務所は多く存在していますし、報酬額も異なるので、無料相談等を利用して比較し、自分に合うところを選びましょう。
ちなみに司法書士以外の税理士や行政書士などは登記の申請手続きができないので、注意してください。
申請方法③オンラインでのサービスを利用する
本店移転登記の申請書(PDF)でダウンロードしたものの、書き方が良く分からない人はオンラインサービスを利用しましょう。GBA法人登記なら、必要事項を入力するだけで書類の自動作成が可能、でき上った書類は郵送するだけなので簡単です。
まとめ
本店移転登記時に必要な書類は、法務局へと提出する次の7種類です。
- 本店移転登記申請書(管轄内外移転ともに必須)
- 株主総会議事録(定款の内容を変更する場合のみ)
- 株主リスト(株主総会議事録を添付する場合のみ)
- 取締役会議事録(取締役会を設置している会社)
- 取締役会決定書(取締役会が未設置の会社)
- 委任状(代理人が申請する場合)※管轄外移転なら2通
- 印鑑届出書/印鑑カード交付申請書(管轄外移転の場合のみ)
移転が完了してから必ず2週間以内に申請してください。また、申請して登記を完了させてから履歴事項全部証明書も合わせて取得しておきましょう。
法務局以外にも税務署・都道府県税事務所・年金事務所・労働基準監督署・ハローワーク・各市町村役所、それぞれで用意されている書類を書いて忘れずに届け出ましょう。
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