本店を移転する際は、登記手続きを忘れずに行なわなければなりません。また、管轄内なのか管轄外なのかで必要書類や費用が異なります。
本ページでは、管轄外へ本店を移転する場合のオンラインでの申請方法・揃えるべき書類やかかる費用を分かりやすく解説していきます。
法務局で申請する方法も記載するので、どういった点が違うのかも比較してみてください。
本店移転登記:管轄内と管轄外の違い
本店を移転する際は、管轄内と管轄外で揃える書類が異なります。まずは、管轄内の移転と管轄外の移転について違いを確認していきましょう。
管轄内での移転
管轄内の移転は、旧住所つまり移転する前の住所を管轄する法務局が変わらないことを意味します。同じ区内で丁や番地だけが変わる場合は、この管轄内移転に当てはまります。
管轄外への移転
反対に管轄外への移転は、旧住所を管轄する法務局とは別の法務局に変わることを意味します。
注意していただきたいのは、先ほど同じ区内で丁や番地が変わるだけならば管轄内と言いましたが、東京都は別です。区をまたいだ移転の場合、管轄法務局は変わることがあるので注意してください。
東京都を含め、移転先がどの管轄区域に該当するのかは、法務局:管轄のご案内のページで確認しましょう。
定款も合わせて確認しよう!必要に応じて変更する
本店を移転する際は、定款も合わせて確認してください。特に管轄外へ移転する場合は、定款に記載の本店住所が変わるので、変更しなければならないからです。
「○○区内に置く」だけの記載で同じ区内での移転ならば、定款は変更しなくても良いです。定款変更はすべての人に当てはまるのでは無いので、管轄内・外で必要に応じて対処してください。
管轄外へ本店を移転する際の必要書類
管轄外へ本店を移転する際に、揃えるべき必要書類をまとめました。どのような書類か簡単に説明していきます。
本店移転登記申請書
まず必ず要るのが、本店移転登記申請書です。
申請書は法務局に置いてあるので直接記入するか、商業・法人登記の申請書様式の3.1-14にてPDFでダウンロードできます。記載例のPDFも確認できます。
株主総会議事録/取締役会議事録
管轄外へ移転するなら定款の変更が必要で、その定款を変更するには株主総会を開催して決議しなければなりません。また取締役会を設置している会社では、取締役会を開きます。
その開催・決議した記録を残した議事録も用意しましょう。これらの議事録に関しては指定の様式が無いので、記載例を調べて自分でWord等で作成すればOKです。
株主総会議事録を提出する場合は株主リストも添付する
株主総会議事録を提出するなら、合わせて株主リストも添付してください。どのような株主がいるのかを一覧でまとめたリストが必要だからです。
株主リストの添付が必要となる場合
法務省:株主リストが登記の添付書類になりました
1 登記すべき事項につき株主総会の決議(種類株主総会の決議)を要する場合
印鑑届出書/印鑑カード交付申請書
管轄外へ移転する場合は、印鑑届出書も必ず要ります。移転後の住所を管轄する法務局へ、新たに印鑑を届け出なければならないからです。
また移転する前の印鑑カードは使用不可になるので、印鑑カード交付申請書も合わせて提出しましょう。
委任状(代理人に依頼する場合のみ)
委任状は代理人(司法書士)に依頼する場合にのみ、必要な書類です。自分で行うのであれば不要です。
管轄外への本店移転時にかかる費用
管轄外へ本店を移転する場合にかかる費用を確認していきましょう。
登録免許税6万円
本店移転時に支払う税金に登録免許税があるのですが、管轄外への移転だと6万円かかります。
管轄内だと3万円ですが、管轄外は移転する前と後の法務局2ヶ所に支払うので2倍の6万円がかかるのです。
郵送する場合は切手代も必要
本店移転登記は法務局に申請書を郵送して手続きすることもできます。法務局に行く時間が無い・遠いなどで申請書を郵送する場合は、切手代が必要です。
司法書士への依頼や他のソフトなどを利用する場合はその料金も発生
次のような場合には、それぞれに決められた料金を支払います。
- 本店移転登記を司法書士に依頼して代理で申請してもらう
- 他のソフトなどを利用して手続きする
司法書士に依頼するならば報酬ですし、『オンライン申請なら2つの方法がある』の章で解説するGVA法人登記なら、本店移転登記の書類作成に11,000円がかかります。
管轄外への本店移転登記をオンラインで申請する方法
本店移転登記の手続きをオンラインで申請する場合は、法務省が監修する登記・供託オンラインシステムで行います。
このシステム内にある「申請書用総合ソフト」をダウンロードして利用登録後に、以下の手順で移転登記の手続きを行なってください。
簡単に、書類作成~送信するまでの流れを説明します。オンラインで申請する際に必要なものは、次の2点です。
- 申請書用総合ソフト
- PDF化した必要書類
ソフトは予めパソコンにダウンロードしておき、議事録など申請書以外に必要な書類がある場合は作成後にPDF化して保存しておきましょう。
登記・供託オンラインシステムと検索して「利用者登録」を行なってください。その後、ログインします。
「申請書作成」ボタン→商業登記申請書から登記申請書の順にクリックしてください。
その中にある、「登記申請書(会社用):株式会社、特例有限会社、合資会社、合同会社、外国会社【署名要】」を選んで必要事項を入力していきます。
Point!登録免許税の金額は6万円にする
管轄外への移転なので、登録免許税の金額欄は60,000と入力してください。半角での入力です。
Point!経由の有無は「有」にする
管轄外への移転は、経由の欄は「有」にしてください。管轄内での移転ならば、ここは「無」にします。
Point!新法務局宛書類の申請先は旧法務局を記載する
管轄外移転の場合、新旧両方の法務局に申請書を提出します。新法務局宛の書類の申請先には、必ず”旧法務局名”を入力してください。
旧法務局から新法務局へと通達される仕組みだからです。
次に登記申請書以外の株主総会議事録やリスト・取締役会議事録などの必要書類があれば、添付します。
添付した書類には電子署名が必要なので、忘れずに付与してください。
すべての書類が揃えば「送信」をクリックして、送りましょう。
最後に登録免許税を支払います。
前章で説明した通り、オンラインで行なう場合は電子納付します。ネットバンクをお持ちの方は表示される振込先に管轄外移転の登録免許税6万円を振り込んでください。
本店移転登記のオンライン申請には他にも2つの方法がある
管轄外への本店移転登記のオンライン申請方法には、登記・供託オンラインシステムの他にも次の2つの方法から申請手続きが可能です。
- 会社法人登記手続きセンター
- GVA法人登記
それぞれどんなサービスなのかを解説します。
司法書士にオンライン上で依頼する「会社法人登記手続きセンター」
会社法人登記手続きセンターは大阪の司法書士事務所が運営しているサイトで、全国どこからでも利用できます。
書類作成から始まり、登記・申請→その後の完了手続きまでをすべて一括して請け負ってくれるので、手間なくスピーディです。
費用も、管轄外の本店移転だと利用料金は12,000円とリーズナブルです。この料金に登録免許税と会社謄本の取得代や郵送・通信費などの実費が加算されます。
書類の作成をサポートする「GVA法人登記」
GVA法人登記は、登記の知識が無くても申請書を簡単に作成できるサイトです。利用者数もNo.1で、本店移転の他に役員変更や商号・目的変更など10種類の変更登記に対応しています。
本店移転の書類作成にかかる費用は11,000円で、法務局宛の封筒を郵送・押印だけで完結するかんたん郵送パックオプション4,980円+税を付ければ、より楽に申請手続きが可能です。
管轄外への本店移転登記を法務局で申請する方法
申請書を自分で手書きで作成し、法務局に持参して手続き・申請します。オフィスや自宅から近い人などは、この方法が一番確実かもしれません。
申請書は法務省のページからダウンロードしても良いですし、法務局にて手続きするならばその場で書くのも良いでしょう。
分からない点があれば、法務局の職員がどう書くべきかなどを丁寧に教えてくれるからです。
管轄外に本店を移転する時の4つの注意点
管轄外へと本店移転する時の注意点を4つまとめました。これらを意識しながら、忘れずに本店移転登記申請を行なって頂ければと思います。
注意点①登記申請書は2通必要
本店移転登記申請書は、新旧法務局宛の2通用意してください。2通とも、申請・提出する先は旧法務局宛です。
新法務局に申請しても受理されないので、ここでの法務局名の記載は気を付けてください。
注意点②本店移転の登記手続きは2週間以内に行う
本店移転登記の手続きは、本店の移転が完了してから必ず2週間以内に行なってください。
2週間を過ぎてしまっても受理はしてもらえるようですが、あまりに過ぎてしまうと罰金が科されることもあります。
注意点③登録免許税が2ヶ所分かかる
管轄外への移転の場合、登録免許税が2ヶ所分、つまり3万円×2=6万円かかります。申請書の提出先は一箇所だけなので、うっかりしがちです。
注意点④実印も新しい法務局へと届出し直す
会社の実印も、忘れずに新しい法務局へと届出し直しましょう。印鑑届出書にくわえて印鑑カード交付申請書も記載して、本店移転登記とセットで手続きすると覚えておいてください。
まとめ
管轄外への本店移転登記をオンラインで行なう場合、次の3つの方法があります。
- 登記・供託オンラインシステムを利用する
- 会社法人登記手続きセンターを利用する
- GVA法人登記を利用する
もちろん、旧法務局に行って直接申請手続きしても問題ありません。いずれの方法でも、本店の移転が完了してから2週間以内が申請期日です。
登録免許税6万円が最低限かかる費用で、後はどの方法で申請・手続きするかでトータルでの金額が違ってきます。
それぞれにメリットデメリットがあるので、予算も考慮しつつ一番スムーズにできる方法を選んでください。
コメント